【結論】初心者はまずこれを買うべし
これから登山用傘をデビューするなら、モンベル(mont-bell)の『U.L.トレッキングアンブレラ』。これ一択です。

- 価格: 5,000円台(コスパ最強)
- 重量: 128g(スマホより軽い)
- 判定: ★迷ったらこれを買えば間違いなし
理由は単純。
「軽さ」「強さ」「価格」の三角形が、最も高いレベルで正三角形を描いているからです。
現在、オンラインでは販売中止なため、第二案としてサンブロックアンブレラもオススメです。1cm長くなり、72g重くなりますが、8本骨で丈夫に使えます。
各モデル徹底解説:なぜそれが「買い」なのか?
ここからは、結論で挙げたモンベルを含め、特徴の異なる5つの名作傘について、スペックの裏側や実際の使用感を深掘りします。
【結論・総合No.1】mont-bell|U.L.トレッキングアンブレラ
「優等生すぎて隙がない、日本の山のニュースタンダード」
- 重量: 128g
- 親骨の長さ: 50cm(使用時直径88cm)
- 骨の本数: 8本
▼ここが凄い:素材への執念
ただ軽いだけではありません。生地には「バリスティック エアライト」という、防弾チョッキの技術を応用した極薄かつ高強度のナイロンを使用しています。 10デニールというストッキング並みの薄さですが、登山道の枝に引っ掛けても簡単には裂けません。さらに、撥水性能(ポルカテックス加工)が世界最高レベル。バサバサッと振るだけで水滴が飛び散り、テントやザックに入れても周囲を濡らしにくいのです。
▼ここがポイント:8本骨の安心感
軽量化のために骨を6本や5本にするメーカーが多い中、モンベルは頑なに「8本」を維持しています。これにより円形に近い形状が保たれ、風を面で受け流すことができます。「軽さも欲しいけど、すぐ壊れるのは嫌だ」という日本人の気質に最も合致した設計です。
【こんな人におすすめ】
- 初めての登山用傘を探している人
- 一度買ったら長く使いたい人
- 街中でも違和感なく使いたい人
2. 【軽さNo.1】EVERNEW|U.L. All weather umbrella
「持っていることすら忘れる、空気のような存在感」
- 重量: 76g
- 親骨の長さ: 50cm(使用時直径83cm)
- 骨の本数: 5本
▼ここが凄い:狂気的なまでの軽量化
76g。これは卵(Lサイズ)約1.2個分です。ザックのサイドポケットに入れても、重さを全く感じません。「あれ? 今日傘持ってきたっけ?」と不安になって確認してしまうレベルです。 骨を5本まで減らし、中棒(シャフト)も極限まで細くしました。
▼注意点:軽さとのトレードオフ
骨が少ない分、風への耐性は低いです。強風下では裏返りやすい(すぐ戻せますが)ので、風のない樹林帯専用と割り切る必要があります。また、5角形に近い形状なので、8本骨に比べるとカバー範囲は若干狭くなります。 それでも、「1gでも削りたい」UL(ウルトラライト)ハイカーにとっては、代えの利かない神アイテムです。
【こんな人におすすめ】
- 体力が不安で、荷物を極限まで軽くしたい人
- 「基本はレインウェアだが、お守りとして持ちたい」人
- UL(ウルトラライト)スタイルを目指す人
3. 【遮熱No.1】Six Moon Designs|シルバーシャドー
「自分専用の『日陰』を持ち歩く、夏の救世主」
- 重量: 193g
- 親骨の長さ: 63.5cm(シャフト長)
- 骨の本数: 8本
▼ここが凄い:圧倒的な「遮熱性」
アメリカのロングトレイル(数千キロ歩く旅)では定番のアイテム。表面の銀色コーティングが太陽光を強烈に反射します。 日本の夏山、特に低山のアプローチや林道歩きは灼熱地獄です。この傘をさすと、体感温度が5〜10℃下がるとも言われます。雨除けとしてだけでなく、「熱中症対策ギア」としての側面が非常に強いです。
▼使用感:持ち手がしっかりしている
軽量傘は持ち手(グリップ)を小さくしがちですが、これはしっかり握れるEVAフォームグリップを採用しています。長時間さしていても手が疲れにくいのが特徴です。
【こんな人におすすめ】
- 暑がりで、夏山の林道歩きが苦手な人
- 雨の日だけでなく、炎天下の日傘としてもガッツリ使いたい人
- 海外ハイカーのようなスタイルに憧れる人
4. 【堅牢美No.1】Snow Peak|スノーピークアンブレラUL
「壊れにくく美しい、道具としての完成形」
- 重量: 133g
- 親骨の長さ: 55cm
- 骨の本数: 8本
▼ここが凄い:故障リスクを減らす独自構造
一般的な傘にある「ダボ(関節部分の金具)」や「ハジキ(開く時にカチッとなる爪)」などの小さなパーツを極力排除し、生地と骨を縫い合わせる独自の構造を採用しています。 パーツが少ない=壊れる箇所が少ない、ということ。強風で煽られても、構造全体で力を逃がすため耐久性が非常に高いです。
▼デザイン:街でも浮かない上品さ
グレーやベージュといった落ち着いたアースカラーと、メカニカルな美しさはスノーピークならでは。スーツに合わせて通勤で使っても全く違和感がありません。「山道具を日常でも使い倒す」という賢い使い方ができます。
【こんな人におすすめ】
- 道具の機能美やデザインにこだわりたい人
- 山だけでなく、日常の通勤カバンにも常備したい人
- 金具が錆びたり壊れたりするストレスから解放されたい人
深掘り解説:なぜ、山で「傘」なのか?
1. 物理的な「空間」が作る、最強の換気システム
ゴアテックスなどの防水透湿素材は優秀ですが、日本の高温多湿な環境で運動すれば、発汗量が透湿性能を上回り、結局中は汗でびしょ濡れになります(これを「内部濡れ」と呼びます)。 傘は、体と雨の間に物理的な空間を作ります。背中や脇が外気に直接触れるため、通気性は物理的に最強です。 「上は傘、下は短パン」というスタイルなら、雨の日でも驚くほどサラサラと快適に歩けます。
2. 「心の余裕」を生む、ドライな空間
レインウェアのフードを被ると、視界が狭まり、雨の音で周囲の音が聞こえづらくなります。これは閉塞感を生み、メンタルを削ります。 傘をさせば、視界はクリアなまま。
- 濡れていない手でスマホの地図を確認できる
- おにぎりをゆっくり食べられる
- 眼鏡が曇らない・濡れない この「普通の動作」ができることが、雨の登山におけるストレスを劇的に軽減します。
3. 停滞時・移動時のQOL(生活の質)向上
傘が活躍するのは歩いている時だけではありません。
- テント場での移動: テントからトイレに行く際、わざわざレインウェアを着込むのは面倒です。傘ならサンダル履きでサッと行けます。
- バス待ち・電車移動: 下山後、泥のついたレインウェアのままバスに乗るのは気が引けます。傘があればウェアを脱いで、快適な服装で帰路につけます。
命を守るための「運用ルール」徹底解説
山で傘を使うことは「快適」ですが、使い方を誤れば「凶器」にもなり得ます。
以下のルールは絶対に守ってください。
ルール1:森林限界(高い木がない場所)を超えたら即収納
傘を使っていいのは「樹林帯(森の中)」までです。 稜線に出ると、風を遮るものがなくなります。
そこで傘をさすと、風に煽られてバランスを崩し、最悪の場合は滑落します。また、強風で傘の骨が折れ、顔や目を傷つけるリスクもあります。 「木がなくなったら、傘もしまう」。これが鉄則です。
ルール2:雷鳴が聞こえたら使用禁止
山は平地よりも雷のリスクが高い場所です。
カーボン製の骨であっても、高く掲げた傘は避雷針の役割を果たしてしまう可能性があります。
遠くでゴロゴロと鳴り始めたら、たとえ雨が降っていても傘は閉じ、低い姿勢で安全を確保してください。
ルール3:すれ違い時の「傘マナー」
狭い登山道ですれ違う時、傘をさしたままだと相手の目に入ったり、傘の露を相手にかけてしまったりします。
- すれ違う時は傘を閉じる
- または、傘を山側(谷側ではない方)に高く掲げて道を譲る この配慮ができるかどうかが、スマートなハイカーの条件です。
まとめ:雨の山を「楽しむ」ための投資
登山用傘は、決して安い買い物ではありません。
しかし、一度使うと「雨の日の登山」に対する価値観がガラリと変わります。
苦行だと思っていた雨の森が、しっとりと静かで美しい場所に変わる。
その体験に5,000円〜10,000円を投資するのは、決して悪くない選択です。
まずはモンベルの『U.L.トレッキングアンブレラ』を手に取り、近所の低山で雨の日ハイクを試してみてください。きっと、「なんでもっと早く買わなかったんだろう」と思うはずです。
