はじめに

登山において、最も恐ろしい敵の一つが「汗冷え」です。
山頂で休憩した瞬間、急に体がゾクッとした経験はありませんか?
一度濡れてしまったウェアは、強風に吹かれると一気に体温を奪い、最悪の場合は低体温症にもつながります。
そんな登山の悩みを解決してくれるのが、「ドライ系アンダーウェア(ドライレイヤー)」と呼ばれる、肌着の下に着るインナーです。
現在、このジャンルで圧倒的な人気を二分しているのが、
①ミレー(Millet)の「ドライナミックメッシュ」
②ファイントラック(finetrack)の「ドライレイヤー」
です。
「結局どっちがいいの?」
「高い買い物だから失敗したくない」
そんな方に向けて、両者を長年愛用し、夏山から冬山まで使い倒してきた視点から徹底比較します。
それぞれの仕組みの違い、相性の良いウェア、メンテナンス方法まで詳しく解説します。
そもそも、なぜ速乾Tシャツだけじゃダメなの?
「吸汗速乾のポリエステルTシャツを着ているから大丈夫」と思っていませんか?
実は、速乾Tシャツも「濡れている時間」は必ずあります。
汗を吸った布が肌に張り付いている間は、気化熱によって体温が奪われ続けます。
ドライ系アンダーウェアの役割は、「濡れたTシャツを肌に触れさせないこと」。
これを実現するためのアプローチが、ミレーとファイントラックでは真逆なのです。
ミレー「ドライナミックメッシュ」の特徴

〜物理的な「厚み」で汗を隔離するパワータイプ〜
通称「アミアミ」。見た目は鎖帷子(くさりかたびら)のようで、温泉の脱衣所では少し勇気がいりますが、その性能は本物です。
仕組み:汗をポンプのように吸い上げる
素材はポリプロピレンをベースにした、かなり肉厚なメッシュです。
かいた汗を毛細管現象で素早く吸い上げ、上のベースレイヤー(Tシャツ)に移動させます。そして、厚みのある網自体は保水しないため、肌は常にドライな状態を保てます。
メリット
- 圧倒的なドライ感:どんなに大量の汗をかいても、肌へのベタつきが皆無です。物理的に肌とウェアが離れているため、不快感が物理的に遮断されます。
- 高い保温性(冬に強い):メッシュの厚みの分だけ「空気の層(デッドエア)」ができるため、冬場は非常に暖かいです。
- 耐久性が高い:構造そのものが機能の源なので、長く使っても性能が落ちにくいです。
デメリット
- 見た目のインパクト:お世辞にも格好良いとは言えません(上に服を着れば問題なし)。
- 締め付け感(コンプレッション):肌に密着させて汗を吸うため、サイズ選びはタイトめが基本。締め付けが苦手な人は窮屈に感じるかもしれません。脱いだ後、肌に網目の跡がつきます。
- 夏は少し暑いかも:保温性が高いため、真夏の低山ではオーバーヒート気味になることがあります。
ファイントラック「ドライレイヤー」の特徴

〜ハイテク技術「撥水」で汗を弾くテクニカルタイプ〜
日本のメーカーが開発した、非常に薄くしなやかなインナーです。
仕組み:汗を「ザル」のように通す
生地全体に強力な耐久撥水加工が施されています。
肌にかいた汗を通過させ、上のベースレイヤーに渡します。一度通過した汗は、撥水の膜に阻まれて肌側に戻ってきません(濡れ戻り防止)。
メリット
- 自然な着心地:非常に薄く柔らかいメッシュ素材で、着ていることを忘れるほどストレスフリーです。
- 季節に合わせて選べる:
- ベーシック: オールシーズン対応の標準モデル。
- クール: 真夏や暑がりな人向け(涼しい)。
- ウォーム: 冬山や寒がりな人向け(暖かい)。と、ラインナップが豊富なのが強みです。
- 薄いので重ね着しやすい:厚みがないため、タイトなウェアの下に着てもゴワつきません。
デメリット
- 撥水機能の寿命:洗濯を繰り返すと徐々に撥水性が落ちてきます(メンテナンスで復活可能)。
- 大量発汗時の処理能力:滝のように汗をかくと、膜を通過するスピードが追いつかず、一時的に濡れを感じることがあります。
【徹底比較】スペック一覧表
| 比較項目 | ミレー(ドライナミック) | ファイントラック(ドライレイヤー) |
| 最大のウリ | 圧倒的ドライ感&保温 | 自然な着心地&汎用性 |
| 仕組み | 【厚み】で物理的に離す | 【撥水膜】で弾く |
| 汗処理能力 | ★★★★★ (大量の汗もOK) | ★★★★☆ (適度な汗に最適) |
| 保温性 | ★★★★★ (空気層ができる) | ★★★☆☆ (薄い・モデルによる) |
| フィット感 | コンプレッション (強め) | ソフトフィット (優しい) |
| 生地の厚さ | 厚い | 極薄 |
| 耐久性 | 高い (構造上の機能) | 普通 (撥水ケアが必要) |
| 見た目 | 網タイツ・ボンテージ風 | 普通のメッシュインナー |
失敗しない「上に着る服(レイヤリング)」のルール

どちらのインナーも単体では機能しません。上に着る「ベースレイヤー」との組み合わせが命です。
鉄則:吸汗速乾素材を重ねる
ポリエステルなどの化繊、またはメリノウールのウェアを必ず重ねてください。
インナーが吸い上げた(通した)汗を、上の服がスポンジのように吸い取って拡散させることで、初めてシステムが完成します。
絶対NG:綿(コットン)
- ファイントラックの場合:致命的です。上に綿を着ると、綿が汗を吸って飽和し、逃げ場を失った汗が肌側にあふれてきます(ウォーターベッド状態)。絶対にやめましょう。
- ミレーの場合:できれば避けるべき。ミレーの厚みのおかげで、濡れた綿が肌に張り付く不快感は軽減されますが、汗が外に逃げないため「蒸れ」の原因になります。
【おすすめの組み合わせ】
- 夏山: ドライインナー + 薄手の化繊Tシャツ
- 春秋・冬: ドライインナー + メリノウール(または厚手の化繊)※メリノウールとの相性はどちらも抜群です。ウールの「乾きにくさ」という弱点をドライインナーがカバーしてくれます。
メンテナンスとサイズ選び
洗濯方法の違い
- ミレー:洗濯ネットに入れれば、通常の洗濯でOK。柔軟剤は吸汗性を阻害する可能性があるので避けたほうが無難ですが、神経質にならなくても大丈夫です。
- ファイントラック:柔軟剤は厳禁です。撥水基がコーティングされてしまい、水を弾かなくなります。もし水を吸うようになってしまったら、専用の洗剤で洗うか、乾燥機やアイロン(低温)で熱を加えると撥水性が復活することがあります。
サイズ選びのコツ
どちらも「肌に密着していること」が機能発揮の条件です。
大きめサイズでダボついていると、肌から汗を吸い上げられません。
- ミレー:伸縮性が非常に高いので、迷ったら小さい方でも入りますが、着丈が長めです。S/M、L/XLといった2サイズ刻みの展開です。
- ファイントラック:通常の日本サイズ(S, M, L…)で選んでOKです。いつものTシャツと同じサイズ感でジャストフィットするように作られています。
結論:あなたにおすすめなのはどっち?
最後に、タイプ別のおすすめをまとめます。
【ミレー】ドライナミックメッシュ がおすすめな人

- とにかく汗っかき。
- 冬山登山や、気温が低い時期の登山がメイン。
- 肌への張り付きをとにかく無くしたい。
- 「機能美」としてアミアミを受け入れられる。
【ファイントラック】ドライレイヤー がおすすめな人

- 締め付けが苦手、柔らかい着心地がいい。
- 夏山登山や、トレランなど運動量が多いアクティビティをする。
- 季節によって「クール」や「ウォーム」を使い分けたい。
- 温泉や小屋での着替えで、あまり奇抜な見た目になりたくない。
まとめ
まだドライ系インナーを持っていない方は、まずはファイントラックの「ドライレイヤー ベーシック」から入るのが癖がなくておすすめです。
逆に、汗冷えに深刻に悩んでいる方は、一発逆転を狙ってミレーを試してみてください。
どちらを選んでも、その「ドライ感」に感動することは間違いありません!
ちなみに私は、ミレーの機能美が好きなのでずっとミレー着ています。




