はじめに:冬の山、そのヒートテックが命取りかも?

「冬の山は寒いから、ユニクロの極暖ヒートテックを着ていけば完璧!」
そう思って準備をしているあなた。 ちょっと待ってください!その選択、山では「逆効果」になるかもしれません。
元登山用品店スタッフとして、声を大にして言いたいことがあります。 「冬山で寒さを感じる原因の8割は、ヒートテックによる“汗冷え”です」
今回は、なぜ街で最強のヒートテックが山ではNGなのか? そして、一度着たら戻れない「登山用ベースレイヤー(肌着)」の凄さについて、分かりやすく解説します。
なぜ「ヒートテック」は山でダメなのか?
結論から言うと、ヒートテックが悪いのではありません。「使い所」が違うのです。
ヒートテックの仕組み(レーヨン素材)
ヒートテックは、体から出る水分を吸って発熱する「吸湿発熱」という仕組みです。
水分を「吸って、保つ」性質があります。
山で起きること(汗冷えの恐怖)
- 登りで汗をかく。
- ヒートテックが汗をたっぷり吸って発熱する(ここまでは暖かい)。
- 生地が水分を抱え込んだまま乾かない。
- 山頂で休憩した瞬間、濡れた生地が冷やされ、「冷たい濡れ雑巾」を肌に貼り付けた状態になる。
- 体温が一気に奪われる(=低体温症のリスク)。
これが登山用語で言う「汗冷え」です。
街中やキャンプのように「あまり動かない」ならヒートテックは最強ですが、「登って汗をかく」登山とは相性が最悪なのです。
元店員が判定!ヒートテックを「着ていい人」「ダメな人」

じゃあ絶対に禁止なの?というと、例外もあります。
⭕️ 着ていい人(シチュエーション)
- ロープウェイで山頂まで行き、ほとんど歩かずに景色を見るだけの人。
- キャンプ場で、じっと焚き火にあたる時。
- 寝袋で寝る時のパジャマとして。
- 条件: 「汗をかかない」こと。
❌️ ダメな人(シチュエーション)
- 高尾山でも、下から自分の足で登る人。
- コースタイム3時間以上のハイキングをする人。
- バックパックを背負う人(背中が必ず濡れます)。
- 理由: 登山は冬でも必ず汗をかくスポーツだから。
正解は「登山用ベースレイヤー」。何が違う?
登山メーカーの肌着(ベースレイヤー)は、ポリエステルやウールで作られています。
これらは「水分を吸っても、即座に外へ排出する」機能に特化しています。
- ヒートテック: 水を吸って溜め込む(乾くのが遅い)
- 登山用肌着: 水を吸って拡散させる(速乾)
この「乾くスピード」の違いが、生死を分けるといっても過言ではありません。 3万円のゴアテックスのアウターを買う前に、まずは5,000円のベースレイヤーを変えてください。世界が変わります。
【閲覧注意】見た目はヤバいが性能は最強。ミレー「あみあみ」

登山用肌着にも色々ありますが、私が初心者にこそ試してほしい「最終兵器」があります。 それが、ミレー(Millet)の「ドライナミックメッシュ」です。
ミレーのあみあみ

究極の「汗冷え」防止 かいた汗を即座に上のレイヤー(吸汗速乾ウェア)へ移動させ、肌を常にドライな状態に保ちます。登山などの発汗を伴うアクティビティで、体温を奪われるリスクを劇的に減らします。
「空気の層」による保温と断熱 厚みのあるメッシュ構造がデッドエア(動かない空気)を溜め込むため、寒い時期は保温性を発揮し、暑い時期は通気性を確保します。
「え…何これ?ボンテージ?」
「変質者…?」
分かります。私も最初は爆笑しました。
でもこれ、登山業界では「最強の汗冷え対策装備」として常識になっているんです。
学生時代も夏合宿参加者は全員購入必須でした。
なぜ「網(メッシュ)」なのか?
この分厚い網が、「濡れた服」と「肌」を物理的に引き剥がしてくれるからです。 上に着たTシャツが汗でビショビショになっても、この網のおかげで肌には触れません。つまり、「ずっとサラサラ」なんです。
見た目の羞恥心さえ乗り越えれば、これほど快適な冬山装備はありません。 (※安心してください、上に服を着れば見えません!)
もちろん、あみあみだけでは寒いので、あみあみの上に防寒着を切る必要はあります。ただ、汗冷えを防ぐうえであみあみより快適なインナーはありません。
網はハードルが高い…という人へ。王道のモンベル
「さすがに網を着る勇気はない…」 という方には、王道のモンベルをおすすめします。
① ジオライン(化学繊維)
- 特徴: とにかく乾くのが早い。暑がりな人や、運動量が多い人向け。
- コスパ: 3,000円〜4,000円程度とお手頃。
② スーパーメリノウール(天然素材)
- 特徴: 汗冷えしにくく、着た瞬間から温かい。寒がりな人向け。
- 防臭: 何日着ても臭わないので、山小屋泊にも最適。
まずはこのどちらかを持っておけば、冬の低山で凍えることはなくなります。
まとめ:肌に触れるものこそ、投資しよう
冬の登山で「寒い寒い」と言っている人の多くは、アウターではなくインナー選びで間違えています。
- 街着(ヒートテック): 止まっている時に暖かい
- 山着(ベースレイヤー): 動いて汗をかいても冷えない
この違いを理解して、正しい装備を選べば、冬の山はもっと快適で安全な場所になります。
まずは騙されたと思って、あの「網シャツ」か「ジオライン」を一枚試してみてください。 山頂での「背中の冷やっと感」が消える感動を、ぜひ味わってほしいです!



