【登山とユニクロ】冬山でヒートテックは禁止?元店員が教える「着ていい人」と「ダメな人」の違い

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ポレ鳥(ぽれとり)

「高尾山からキリマンジャロへ」

登山歴8年・元登山ショップ店員。 近所の里山歩きから、憧れの海外登山まで。初心者が一歩ずつステップアップするためのノウハウを丁寧に解説します。

はじめに:冬の山、そのヒートテックが命取りかも?

「冬の山は寒いから、ユニクロの極暖ヒートテックを着ていけば完璧!」

そう思って準備をしているあなた。 ちょっと待ってください!その選択、山では「逆効果」になるかもしれません。

元登山用品店スタッフとして、声を大にして言いたいことがあります。 「冬山で寒さを感じる原因の8割は、ヒートテックによる“汗冷え”です」

今回は、なぜ街で最強のヒートテックが山ではNGなのか? そして、一度着たら戻れない「登山用ベースレイヤー(肌着)」の凄さについて、分かりやすく解説します。

なぜ「ヒートテック」は山でダメなのか?

結論から言うと、ヒートテックが悪いのではありません。「使い所」が違うのです。

ヒートテックの仕組み(レーヨン素材)

ヒートテックは、体から出る水分を吸って発熱する「吸湿発熱」という仕組みです。

水分を「吸って、保つ」性質があります。

山で起きること(汗冷えの恐怖)

  1. 登りで汗をかく。
  2. ヒートテックが汗をたっぷり吸って発熱する(ここまでは暖かい)。
  3. 生地が水分を抱え込んだまま乾かない。
  4. 山頂で休憩した瞬間、濡れた生地が冷やされ、「冷たい濡れ雑巾」を肌に貼り付けた状態になる。
  5. 体温が一気に奪われる(=低体温症のリスク)。

これが登山用語で言う「汗冷え」です。

街中やキャンプのように「あまり動かない」ならヒートテックは最強ですが、「登って汗をかく」登山とは相性が最悪なのです。


元店員が判定!ヒートテックを「着ていい人」「ダメな人」

じゃあ絶対に禁止なの?というと、例外もあります。

⭕️ 着ていい人(シチュエーション)

  • ロープウェイで山頂まで行き、ほとんど歩かずに景色を見るだけの人。
  • キャンプ場で、じっと焚き火にあたる時。
  • 寝袋で寝る時のパジャマとして。
  • 条件: 「汗をかかない」こと。

❌️ ダメな人(シチュエーション)

  • 高尾山でも、下から自分の足で登る人。
  • コースタイム3時間以上のハイキングをする人。
  • バックパックを背負う人(背中が必ず濡れます)。
  • 理由: 登山は冬でも必ず汗をかくスポーツだから。

正解は「登山用ベースレイヤー」。何が違う?

登山メーカーの肌着(ベースレイヤー)は、ポリエステルやウールで作られています。

これらは「水分を吸っても、即座に外へ排出する」機能に特化しています。

  • ヒートテック: 水を吸って溜め込む(乾くのが遅い)
  • 登山用肌着: 水を吸って拡散させる(速乾)

この「乾くスピード」の違いが、生死を分けるといっても過言ではありません。 3万円のゴアテックスのアウターを買う前に、まずは5,000円のベースレイヤーを変えてください。世界が変わります。

【閲覧注意】見た目はヤバいが性能は最強。ミレー「あみあみ」

登山用肌着にも色々ありますが、私が初心者にこそ試してほしい「最終兵器」があります。 それが、ミレー(Millet)の「ドライナミックメッシュ」です。

ミレーのあみあみ

究極の「汗冷え」防止 かいた汗を即座に上のレイヤー(吸汗速乾ウェア)へ移動させ、肌を常にドライな状態に保ちます。登山などの発汗を伴うアクティビティで、体温を奪われるリスクを劇的に減らします。

「空気の層」による保温と断熱 厚みのあるメッシュ構造がデッドエア(動かない空気)を溜め込むため、寒い時期は保温性を発揮し、暑い時期は通気性を確保します。

「え…何これ?ボンテージ?」
「変質者…?」

分かります。私も最初は爆笑しました。

でもこれ、登山業界では「最強の汗冷え対策装備」として常識になっているんです。

学生時代も夏合宿参加者は全員購入必須でした。

なぜ「網(メッシュ)」なのか?

この分厚い網が、「濡れた服」と「肌」を物理的に引き剥がしてくれるからです。 上に着たTシャツが汗でビショビショになっても、この網のおかげで肌には触れません。つまり、「ずっとサラサラ」なんです。

見た目の羞恥心さえ乗り越えれば、これほど快適な冬山装備はありません。 (※安心してください、上に服を着れば見えません!)

もちろん、あみあみだけでは寒いので、あみあみの上に防寒着を切る必要はあります。ただ、汗冷えを防ぐうえであみあみより快適なインナーはありません。

網はハードルが高い…という人へ。王道のモンベル

「さすがに網を着る勇気はない…」 という方には、王道のモンベルをおすすめします。

① ジオライン(化学繊維)

  • 特徴: とにかく乾くのが早い。暑がりな人や、運動量が多い人向け。
  • コスパ: 3,000円〜4,000円程度とお手頃。

② スーパーメリノウール(天然素材)

  • 特徴: 汗冷えしにくく、着た瞬間から温かい。寒がりな人向け。
  • 防臭: 何日着ても臭わないので、山小屋泊にも最適。

まずはこのどちらかを持っておけば、冬の低山で凍えることはなくなります。

まとめ:肌に触れるものこそ、投資しよう

冬の登山で「寒い寒い」と言っている人の多くは、アウターではなくインナー選びで間違えています。

  • 街着(ヒートテック): 止まっている時に暖かい
  • 山着(ベースレイヤー): 動いて汗をかいても冷えない

この違いを理解して、正しい装備を選べば、冬の山はもっと快適で安全な場所になります。

まずは騙されたと思って、あの「網シャツ」か「ジオライン」を一枚試してみてください。 山頂での「背中の冷やっと感」が消える感動を、ぜひ味わってほしいです!