海外トレッキングの準備をしていると、装備や保険ほど語られないけれど、現地に着いてから一番ストレスになるのが「通信手段」だったりします。
ガイドとの待ち合わせ、空港からホテルへの移動、家族への連絡、両替レートの確認、Google翻訳。山に入る前後の街での1〜2日で、想像以上にスマホを使います。
僕自身、2023年のキリマンジャロ、2025年1月のネパール、2025年3月のパタゴニアと、性質の違う3エリアを歩いてきました。それぞれで通信環境がまったく違っていて、「全エリアこれ1択」と言える正解はないというのが正直なところです。
この記事では、僕が実際に行った3エリアでの体感と、2026年時点で選択肢になりうる国際WiFi・eSIMの違いを、フラットに整理してみます。なお、料金・対応国などは記事執筆時点(2026年5月)の各公式サイトを参照していますが、変動が大きい領域なので、購入前に必ず各サービスの公式サイトで最新情報をご確認ください。
私の実体験
先に私の実体験を表にまとめておきます。
| エリア | 街中の電波(僕の体感) | トレッキング中の電波(僕の体感) | 僕が選んだ手段 |
|---|---|---|---|
| キリマンジャロ(タンザニア) | モシ・アルーシャでは普通に使えた | 山小屋エリアではほぼ使えなかった | 結局スマホは使わなかった |
| ネパール(カトマンズ・アンナプルナ周辺) | 主要都市で問題なし | 場所によっては入る山小屋もあった | 現地SIM(Ncell) |
| パタゴニア(エルカラファテ・エルチャルテン) | カラファテは安定 | トレイル内は基本入らなかった | 日本で買ったeSIM |
ここから感じるのは、街での連絡用と、トレッキング中の通信は分けて考えた方がいいということです。山の中で繋がることを前提にした通信契約をすると、お金もデータ容量も無駄になりがちです。
通信手段の4つの選択肢
海外トレッキングで使える通信手段は、ざっくり4つに分かれます。
1. 国際ローミング(日本のキャリアをそのまま使う)
ahamoは「91の国・地域」で追加料金なしの海外データ通信が使えますが、対応国一覧(ahamo公式、2026年4月時点)を見るとアフリカ・中東・中南米は対象が少なめで、ネパール・タンザニア・アルゼンチンはいずれも対象外でした。
楽天モバイル(Rakuten最強プラン)は対応エリアが広く、公式サイトによると2025年12月19日時点で「飛行機内を含む海外指定106の国と地域」で利用可能。ネパール・タンザニア・アルゼンチンすべて含まれています。海外データ通信は2GBまで無料、超過後は最大128kbpsの低速通信、または1GBあたり500円でチャージ可能とのこと。短期+街での軽い利用なら、これだけで足りるケースもあります。
docomoの「世界そのままギガ」は、国・地域限定割の対象エリアでは利用日数に応じた割引、対象外エリアでは24時間980円といった料金体系。「ドコモMAX」「ドコモポイ活MAX」「ahamo」契約者は申し込み不要でデータローミングONだけで使える、という案内になっています(docomo公式、2026年確認)。料金体系は変わりやすいので、出発前に公式サイトでの確認が確実です。
2. eSIM(日本で買って渡航前に設定)
スマホ内にデジタルSIMをダウンロードする方式。物理SIMの差し替え不要で、現地に着いた瞬間から使えます。AiraloやHolaflyが代表的です。
3. 現地SIM(現地空港やショップで購入)
一番安いことが多いですが、購入手続きに時間と語学力が必要です。ネパールのNcellのように空港カウンターで購入しやすい国もあります。
4. ポケットWiFiレンタル(日本で借りて持参)
複数人でシェアできるのが利点。ただし端末を持ち運ぶ手間、充電、紛失リスクがあります。1人旅では割高になりがちです。
僕の場合、ソロまたは少人数のトレッキングが中心なので、ポケットWiFiは選択肢から外しています。以下、eSIMと現地SIMを中心に、エリア別の実情を見ていきます。
エリア①:キリマンジャロ(タンザニア)
2023年8月にマラングルートで登った時の話です。
街では使えた、山では使えなかった
タンザニアの主要キャリアにはVodacom、Airtel、Halotelなどがあります。モシやアルーシャといった登山口の街では、僕が滞在したホテル周辺ではモバイル通信が問題なく使えました。
ただ、キリマンジャロ登山中(山に入っている4〜9日間)はWi-Fiも携帯電波も当てにできなかったというのが僕の体感です。これは別記事にも書いた通り、現地ツアー会社のデイビッドから「山小屋にWi-Fiあるよ」と聞いていましたが、実際に山小屋に着くと「あり」の表記があっても僕は使えませんでした。ガイドたちは何か工夫して使っているようでしたが、結局僕は使えずじまい。
ただ、これで困ったかというと、そうでもありませんでした。現地ツアー会社は登山中ずっと付きっきりで「17時から食事だよ」「明日は6時に出発」と細かく指示してくれるので、スマホで連絡を取る必要がなかったんですね。
キリマンジャロでの僕の選択
僕は結局、タンザニアでは通信契約をせずに行きました。理由は、
- 山に入る前後の街滞在が短い(2泊程度)
- ツアー会社との連絡はWhatsAppで事前に済んでいた
- 空港でガイドのデイビッドと合流する段取りだった
ホテルのWi-Fiが使えたので、街では困りませんでした。
ただ、振り返って整理してみると、こういう人は通信を用意した方が安心だと思います。
- 現地ツアー会社との合流前に何かあった時に連絡したい
- サファリも組み合わせる(サファリ中はガイドと一緒だが、街での自由時間が長い)
- 家族にこまめに無事を伝えたい
その場合、Airaloのタンザニア用eSIMが選択肢になります。Airalo公式サイトを見ると、主要キャリアはHalotel、プランは1GB/3日で$4.50、3GB/7日で$11.00、5GB/15日で$15.00など(2026年5月時点)。
楽天モバイルユーザーで2GB以内に収まる短期滞在なら、追加契約なしで使える可能性もあります。
キリマンジャロ通信のまとめ
- 街:モバイル通信は使える環境だった
- 山:僕の体感では繋がらないと思って計画する方が安全
- 短期+ツアー会社合流済みなら通信なしでも回せた
- 心配ならAiraloのタンザニア用eSIM、または楽天モバイルの無料枠
エリア②:ネパール(カトマンズ・アンナプルナ)
2025年1月にマルディ・ヒマールとランタンを歩いた時の話です。
Ncellは山小屋でも入る場所があった
ネパールでは現地SIMの「Ncell」を選びました。カトマンズのトリブバン国際空港の到着ロビーに公式カウンターがあります。手続きには概ねパスポートと顔写真(パスポートサイズ)が求められますが、店舗によっては写真がなくてもその場で撮影してくれたり指紋登録で済むケースもあるようなので、必ずしも事前に証明写真を用意していなくても購入できることが多いと聞きます。
驚いたのは、標高3,000m前後のロッジでもNcellの電波が入る場所がそれなりにあったことです。完全に圏外になる区間はもちろんありますが、ロッジに着いてみると「あ、入った」となるケースが結構ありました。日中の歩行中は圏外でも、夕方ロッジで写真をクラウドにバックアップする、くらいはできた印象です。
ただし、これはルートや天候、シーズン、その日の電波状況にも左右されるはずなので、「ネパールの山小屋は繋がる」とまでは断言できません。あくまで僕が歩いた2025年1月のマルディ・ヒマールとランタンでの体感です。
Ncellのツーリスト向けプラン
Ncell公式の発表によると、観光客向けには以下の3プランが用意されています(2026年確認時点)。
- Rs.100:データ200MB+10分通話、3日有効
- Rs.500:データ10GB+50分通話+Rs.50残高、7日有効
- Rs.1,000:データ25GB+100分通話+Rs.50残高、28日有効
日本人の感覚だと驚くほど安いです。料金やプラン内容は変わる可能性があるので、最新情報はNcell公式サイトをご確認ください。
なお、ahamoはネパールが海外データ通信の対象外です。楽天モバイルはネパール対応(2GB無料枠あり)なので、短期+軽い利用ならそのまま使える可能性があります。
ネパールでの選択肢
- Ncell(現地SIM):最安。空港購入が比較的スムーズ。本人確認書類が必要。
- AIS SIM2Fly(アジア複数国周遊・物理SIM):Amazon等で事前購入可能。6GB/8日のパッケージが現在の主流で、対応国数や容量は販売バージョンによって変わります(おおむねアジア30か国以上で利用可能)。
- Airalo(eSIM):ネパール用eSIMはNcell回線を使用。Airalo公式によると1GB/3日 $5.00、3GB/7日 $11.00、5GB/15日 $15.00など(2026年5月時点)。
- Holafly(eSIM):データ無制限プランあり。日数指定型。
僕の場合は2回目のネパール訪問だったこともあり、迷わずNcellを選びました。初回で言葉や手続きが不安なら、AIS SIM2FlyかAiraloが現地で慌てずに済む選択肢だと思います。
ネパール通信のまとめ
- 街:Ncellで問題なし
- 山:場所・タイミングによっては入るが、過信は禁物
- 安さ重視ならNcell、楽さ重視ならeSIMやSIM2Fly
- ahamoは対象外、楽天モバイルは対応(2GB無料枠)
エリア③:パタゴニア(エルカラファテ・エルチャルテン)
2025年3月にフィッツロイ・トーレ湖周辺を歩いた時の話です。
カラファテは安定、チャルテンは弱め
エルカラファテはパタゴニアの玄関口で、空港もある中規模の街です。ここでは僕の使ったeSIMが普通に繋がりました。アルゼンチンの主要キャリアはMovistar、Personal、Claroです。
ただ、トレッキングの起点となるエル・チャルテン村に移動すると、状況が変わるという報告があります。住民2,000人ほどの小さな村で、電波の周波数の相性問題で「日本から買って行ったSIMがエルチャルテンでは使えなかった、エルカラファテでは使えた」という旅行者の記録もあります。僕自身は限られた時間しか試していないので、断言は避けます。
トレッキング中、つまりフィッツロイBC(ベースキャンプ)やトレス湖周辺は、僕の体感では基本的に圏外でした。山中で繋がる前提のプランは無駄になります。
パタゴニアでの僕の選択
僕は日本でeSIMを購入していきました。理由は、
- アルゼンチンは英語が必ずしも通じない(ブエノスアイレスでも英語が通じない店が多いと聞きます)
- 短期滞在(4〜5日)でSIMショップを探す時間がもったいない
- 到着即接続が、空港シャトル予約や情報確認のために便利
エルカラファテ空港に着いた瞬間からGoogleマップとSpanish翻訳が使えたのは、想像以上に助かりました。
パタゴニアでの選択肢
- Airalo(アルゼンチンeSIM):Movistar回線。Airalo公式で1GB/3日 $5.00、3GB/7日 $10.00、5GB/15日 $16.50など(2026年5月時点)。
- Holafly(データ無制限eSIM):日数指定で購入。
- 南米リージョナルeSIM(Airalo経由):南米複数国を周遊する人向け。Airalo公式で最低$8.50〜(2026年5月時点)。
- 現地SIM(Movistar等):安いがショップでの手続きが必要。スペイン語があると安心。
南米を複数国回るならリージョナル版、アルゼンチンだけならAiraloかHolaflyが現実的です。
楽天モバイルは2025年以降にアルゼンチンが対応エリアに追加されており、Rakuten最強プランの2GB無料枠の範囲なら追加契約なしで使える可能性があります。長期滞在には不向きですが、短期+軽い利用なら選択肢になります。
念のため:パタゴニアでの両替の話
これはブログの別記事にも書きましたが、エル・チャルテンでは銀行よりもアイスクリーム屋やスーパーの方が両替レートが良いという話があります。逆に言えば、通信が繋がる場所で事前にレートを確認しておくと、現地で動きやすくなります。
パタゴニア通信のまとめ
- 街(カラファテ):僕の体感では問題なく繋がった
- 街(チャルテン):周波数の相性問題が報告されている
- 山:僕の体感では圏外前提
- 短期ならeSIM、楽天モバイルユーザーは2GB無料枠も検討
- スペイン語に自信があれば現地SIMも選択肢
eSIM・物理SIM主要サービスの違いを整理
3エリアともで選択肢に挙がるサービスについて、各公式情報をベースに整理します。
| 項目 | Airalo | Holafly | AIS SIM2Fly(物理SIM) |
|---|---|---|---|
| 形式 | eSIM | eSIM | 物理SIM |
| 対応国・地域数 | 200以上 | 170以上 | アジア中心の周遊(販売バージョンによる) |
| 主なプラン | 容量制 | 無制限制中心 | 容量制 |
| 入手方法 | アプリ・サイト | サイト | Amazon、Yahooショッピング等 |
| 日本語対応 | サイト・アプリ日本語あり | サイト・サポート日本語あり | 日本語の取扱説明書付き販売多数 |
価格や対応国は変更される可能性があるので、購入前に公式サイトでの確認をおすすめします。
Airaloが選ばれる場面
- 国別に細かく買いたい
- 短期+少容量で十分
- 複数国を周遊する(リージョナルプランあり)
Holaflyが選ばれる場面
- データ量を気にせず使いたい
- 動画やテザリングも頻繁に使う
- 日数で購入したい
AIS SIM2Flyが選ばれる場面
- eSIM非対応のスマホを使っている
- ネパール+他のアジア諸国を回る
- 事前にAmazon等で物理的に手元に持っておきたい
おすすめの選び方
一つの考え方として、僕は次の3つの軸で決めています。
1. 滞在期間×街にいる時間で容量を決める
トレッキング中は基本的に圏外と想定するので、計算に入れません。前後の街滞在日数 × 1日500MB〜1GBくらいで見積もると、過不足が少ない印象です。
2. 現地キャリアの強さで選ぶ
ネパールはNcell、タンザニアはVodacom・Airtel・Halotel、アルゼンチンはMovistar・Personal・Claroが代表的なキャリアです。eSIMを買うときも、これらの回線を使っているかチェックしておくと、繋がりやすさのイメージがつきます。
3. トラブル時に日本語サポートが要るか
初めての海外トレッキングなら、日本語サポートが手厚いサービスを選ぶと安心材料になります。慣れてくると価格や柔軟性を優先する方向になっていく、という感覚です。
よくある質問
Q. eSIM対応のスマホかどうかはどう確認する?
iPhoneならXR以降は対応している機種が多いです。Androidは機種によります。「設定」→「モバイル通信」→「モバイル通信プランを追加」のメニューがあれば対応している可能性が高いですが、確実な確認方法は端末メーカーまたはキャリアの公式情報を参照することです。
Q. eSIMをインストールしたら日本の回線は使えなくなる?
デュアルSIM対応機種なら併用できます。日本のSIMで電話番号は維持しつつ、データ通信だけeSIMに切り替える運用が一般的です。詳細はスマホの取扱説明書やキャリア公式情報をご確認ください。
Q. 山の中で本当に圏外なら、緊急時はどうするの?
これは別の話になるので深入りしませんが、現地ツアーに参加していればガイドが衛星電話や無線を持っているケースがあります。完全個人手配の場合は、衛星通信デバイスが選択肢になります。
Q. ポケットWiFiは選ばなくていい?
複数人で旅行する場合や、eSIM非対応のスマホしか持っていない場合は選択肢になります。1人旅でトレッキング中心なら、端末を持ち運ぶ手間に対してメリットが薄いと感じます。
まとめ
海外トレッキングの通信手段は、「山では繋がらない」を前提にして、街での連絡用に最小限を選ぶのが現実的だと感じています。
- キリマンジャロ:ツアー会社合流済みなら通信なしでも回せた。心配ならAiraloまたは楽天モバイルの無料枠
- ネパール:Ncellが安く、ルートによっては山小屋でも入った。手軽さ重視ならeSIMやSIM2Fly
- パタゴニア:街でeSIMを使った。山は圏外前提
3エリアを通じて感じるのは、現地キャリアの方が安く電波も強いことが多い一方で、空港で手続きする時間と語学のコストを考えると、eSIMの「即接続」の価値も大きいということです。どちらが正解というより、自分の旅のスタイルで決める領域だと思います。
次の遠征の参考になれば幸いです。
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※本記事の料金・対応国等の情報は2026年5月時点で各社公式サイト(Airalo、楽天モバイル、ahamo、docomo、Ncell)を参照しています。価格・対応国は変動するため、購入前に各サービスの公式サイトでご確認ください。


