はじめに
この記事では、「海外トレッキングに行く人にとっての保険の選択肢」を全体的に整理します。
クレジットカード付帯保険、単発の海外旅行保険、山岳保険、World Nomadsのような海外発保険まで、2026年5月時点の最新情報でフラットに比較しました。
この記事はこんな人に向けて書きました:
- キリマンジャロ・ネパール・パタゴニアなど海外の山に行く予定がある
- 「エポスカードだけで十分?」と疑問を持ちつつ、調べる時間がない
- クレカ複数枚持ちの「合算」の仕組みを正しく理解したい
- 高山病やヘリ救助で実際にかかる費用感を知っておきたい
「軽トレッキング」と「本格高所トレッキング」では選ぶべき保険が違います。
一律で「これがおすすめ」と言える保険は存在しません。自分の山行レベルに合わせて選ぶための情報を、この記事1本で揃えました。
【私のイチオシ】 エポスカード付帯保険

まず、多くの人が頼りにしているエポスカードの付帯保険を、最新の公式情報で正確に整理します。エポスカードの強みは、コスパの良さです。年会費無料で持てるカードとしては、思っていた以上に手厚い。
エポスカード/エポスゴールドの最新スペック
2026年5月時点、エポスカード公式「海外旅行傷害保険ご利用のしおり」の数値です。
| 補償項目 | エポスカード(Visa) | エポスゴールド | トレッカー視点の評価 |
|---|---|---|---|
| 傷害死亡・後遺障害 | 3,000万円 | 5,000万円 | ★★★ 標準的 |
| 傷害治療費用 | 200万円 | 300万円 | ★★ 高所では物足りない |
| 疾病治療費用 | 270万円 | 300万円 | ★★ 高所では物足りない |
| 賠償責任 | 2,000万円 | 3,000万円 | ★★★★ 十分 |
| 救援者費用 | 200万円 | 500万円 | ★★★★ かなり手厚い |
| 携行品損害 | 20万円 | 50万円 | ★★★ 十分 |
※2026年5月時点。エポスカード公式「海外旅行傷害保険ご利用のしおり」より。
ただし2023年10月から「自動付帯→利用付帯」に改定
2023年10月1日以降に出発する旅行から改定:それまでは「カードを持っているだけで保険適用(自動付帯)」だったのが、「旅行代金をエポスカードで支払うことで保険適用(利用付帯)」に変更されました。
救いは「「旅行代金」をエポスカードでお支払いいただくことで海外旅行傷害保険が適用されます
※利用金額に限りはありません。」という緩い条件であること。空港までの電車代やツアー代金の一部をエポスカードで決済すれば適用されます。とはいえ「うっかり全部別カードで払って保険が効かなかった」というのが最大の落とし穴です。
エポスカードがオススメな人
エポスカードなら…
- 年会費永年無料
- 海外旅行傷害保険(最大3,000万円)
- ゴールドで空港ラウンジ使える
など、年会費が無料でありながら、海外旅行傷病保険付きで、海外トレッキング(高度な登攀以外)にぴったりなカードになっています。年会費無料なので、初心者でも持ちやすいですね。 例えば、下記のような人は、エポスカード持っていてよいと思います。
- 年会費無料で「保険付きカード」を持ちたい
- 海外旅行・海外出張が年1回以上ある
- 将来ゴールドカードを無料で持ちたい
- サブカードとして“安心枠”を確保したい
海外トレッキング向けの保険
海外トレッキング向けの保険は、大きく5つのカテゴリーに整理できます。
| 選択肢 | 主な特徴 | コスト感 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| A. クレジットカード付帯保険 | カード保有で自動/利用付帯 | 0〜30,000円(年会費) | 定期的に海外旅行する人 |
| B. 単発の海外旅行保険 | 旅行ごとに加入する保険 | 1回2,000〜10,000円 | 本格トレッキング1回限り |
| C. 山岳保険(年会費型) | 登山特化型保険 | 年4,000〜10,000円 | 頻繁に登山する人 |
| D. 海外発の保険 | World Nomads等、出国後加入可 | 旅行ごと10,000〜30,000円 | 長期旅・登攀あり |
| E. 複合戦略 | 上記の組み合わせ | シーンによる | 本格高所トレッキング |
それぞれを順に詳しく見ていきます。
【選択肢A】クレジットカード付帯保険を徹底比較
「自動付帯絶滅」時代の現状認識
業界トレンド:自動付帯カードはほぼ絶滅
2023〜2025年にかけて、多くのカードが自動付帯→利用付帯へ改定されました。
- エポスカード・エポスゴールド:2023年10月から利用付帯
- JCBグループの一般・ゴールド:2023年4月から利用付帯
- 三井住友カード(NL):もともと利用付帯
2026年5月時点で「年会費実質無料の自動付帯カード」はほぼ絶滅。完全自動付帯を維持しているのは年会費10,000円以上の上位カードに限られます。
主要クレカ8枚|トレッカー視点比較表
| カード | 年会費 | 付帯 | 傷害治療 | 疾病治療 | 救援者 | 携行品 | 賠償責任 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| エポスカード(Visa) | 無料 | 利用 | 200万 | 270万 | 200万 | 20万 | 2,000万 |
| エポスゴールド | 無料(招待) or 5,000円 | 利用 | 300万 | 300万 | 500万 | 50万 | 3,000万 |
| 楽天カード(一般) | 無料 | 利用 | 200万 | 200万 | 200万 | — | 3,000万 |
| 楽天プレミアム | 11,000円 | 自動+利用 | 300万 | 300万 | 200万 | 50万 | 3,000万 |
| 三井住友カード(NL) | 無料 | 利用 | 100万 | 100万 | 250万 | — | 2,500万 |
| JCBゴールド | 11,000円 | 利用 | 300万 | 300万 | 400万 | 50万 | 1億 |
| セゾンプラチナアメックス | 22,000円 | 利用 | 300万 | 300万 | 300万 | 30万 | 1億 |
| エポスプラチナ | 30,000円 | 自動 | 300万 | 300万 | 200万 | 100万 | 1億 |
※2026年5月時点の各カード公式サイト情報。改定されることがあるため最新情報は公式で要確認してください。
この比較表から見えること
① エポスゴールドの救援者費用500万円が、年会費無料カードの中ではトップクラス
多くの比較記事は「JCBゴールド400万円が最強」と紹介していますが、最新のエポスゴールドの公式PDFを見ると救援者費用は500万円。年会費無料(招待)で持てるカードとしてはこれが現実的に最強です。エポスゴールド未保有なら、まずここから始めるのが合理的。
② 楽天プレミアムは「自動付帯+利用条件のハイブリッド」
楽天プレミアムカードは「完全自動付帯」と説明されることが多いですが、正確にはハイブリッド方式です。傷害治療・疾病治療・救援者費用・賠償責任の主要補償は自動付帯で効きますが、傷害死亡の一部と携行品損害の一部に利用条件があります。実用上は「持っているだけで主要補償が効く」と考えてOK。
③ プラチナクラスは家族カード無料の恩恵あり
セゾンプラチナアメックスやエポスプラチナは年会費が高いですが、家族カードが無料で発行できるため、夫婦や家族で海外トレッキングに行く場合はトータルコストで見ると合理的なケースもあります。
複数枚持ちの「合算」の正しい理解
誤解しやすいポイント
「カードを複数枚持つと補償が合算されて増える」は半分正しく、半分間違いです。正確には:
- 傷害死亡・後遺障害:合算不可。最高保険金額が限度
- 傷害治療・疾病治療・救援者・携行品・賠償責任:保険金額の合計を上限として、実際の損害額を限度に按分支払い
つまり「治療費300万円のカード2枚で合計600万円もらえる」のではなく、「合計600万円を上限として、実際にかかった治療費だけ」が支払われます。実損払いが原則なので、損害が400万円なら400万円までしか出ません。
これを踏まえると、複数枚持ちの本当の意味は「補償の上限を引き上げる」こと。本格高所トレッキングのように治療費が青天井になりうる場面では、この「上限の引き上げ」が効いてきます。たとえばエポスゴールド+楽天プレミアムで治療費の上限は600万円まで引き上げられます。
【選択肢B】単発の海外旅行保険|本格高所の本命
本格高所トレッキングに行くなら、これが本命の選択肢だと思っています。理由は1つ。「治療・救援費用無制限」プランが選べるからです。クレカ付帯では絶対に得られない安心感がここにあります。
主要6社の特徴
| 商品 | 強み | トレッカーへの推奨度 |
|---|---|---|
| ジェイアイ「t@bihoプライム」 | JTBグループ、オリコン顧客満足度2年連続1位、治療・救援費用無制限プランあり | ★★★★★ ベスト |
| ジェイアイ「t@bihoたびほ」 | 上記の標準版、コスパ重視で補償カスタマイズ可能 | ★★★★ 中級まで |
| 損保ジャパン「off!」 | 出発当日OK、テロ対応費用付帯、保険料安め | ★★★★ コスパ◎ |
| AIG損保 | 世界55万箇所提携、治療無制限プランあり、サポート評判◎ | ★★★★ 米州方面に強み |
| 東京海上日動 | 老舗大手、長期プラン充実 | ★★★ |
| SBI損保 | ネット完結、価格最安クラス | ★★★ |
※2026年3月1日からジェイアイ傷害火災保険は商品改定を実施しています。最新の補償内容は公式サイトでご確認ください。
トレッカーが見るべき選定基準
単発保険を選ぶ時、私が重視するのは以下の3点です。
- 治療・救援費用が「無制限」プランで選べるか(t@bihoプライム、損保ジャパンoff!、AIG損保が該当)
- キャッシュレス診療のネットワーク(現地で立て替えなしで治療が受けられるか)
- 登山に関する約款の扱い(後述する「ピッケル・アイゼン使用」の除外規定)
キリマンジャロ・EBCトレックで実際にかかる保険料の目安
| 商品 | キリマンジャロ8日間(治療無制限プラン) | ネパールEBC 16日間(治療無制限プラン) |
|---|---|---|
| ジェイアイ「t@bihoプライム」 | 4,000〜6,000円 | 8,000〜12,000円 |
| 損保ジャパン「off!」 | 3,500〜5,000円 | 7,000〜10,000円 |
| AIG損保 | 4,500〜6,500円 | 9,000〜13,000円 |
※プラン内容、年齢、補償の組み合わせで変動。実際の見積もりは各社サイトで。
1回の旅行で5,000〜10,000円の追加投資で「治療・救援費用無制限」が手に入ると考えれば、本格高所トレッキングなら払う価値は十分にあります。
【選択肢C】山岳保険
ここが多くのブログで誤解されている領域です。「山岳保険」のほとんどは日本国内専用で、海外には使えません。
海外対応の有無で見る山岳保険一覧
| 商品 | 海外対応 | 年会費 | トレッカー視点 |
|---|---|---|---|
| やまきふ共済会 | ○ 一部対応 | 4,000〜10,000円 | ★★★ 制約あり |
| ヤマレコ「チーム安全登山」 | △ 一部対応 | 3,500円〜 | ★★ ケガ補償は海外OK |
| JRO(日本山岳救助機構) | × 国内のみ | 2,200円+事後分担 | ★ 国内登山用 |
| モンベル野外活動保険 | × 国内のみ | 数百円〜数千円 | ★ 国内登山用 |
| 日山協山岳共済会 | × 国内のみ | — | ★ 国内登山用 |
【選択肢D】海外発の旅行保険|長期旅・登攀ありの選択肢
日本人にはあまり知られていませんが、長期トレッキングやピッケル・アイゼンを使う登山を視野に入れる人には重要な選択肢です。
| 商品 | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| World Nomads | 多数のアクティビティ対応、出国後加入可、Explorerプランでアドベンチャーアクティビティの補償範囲が広い、Lonely Planet推奨 | 英語のみ、キャッシュレス診療なし、出国後加入は72時間の待機期間あり、免責金額あり |
| SafetyWing | 月額40ドル〜のサブスク型、長期向け | 補償上限が低め、トレッキング深掘りなし |
| AURAS | 1日1.5USD〜超格安、最長2年 | 上限25万USD |
| Insured Nomads | 充実した補償、ノマド向け | 価格やや高め |
World Nomads
トレッカー界隈で名前が出るWorld Nomads。世界中のバックパッカー御用達で、Lonely Planetも推奨。StandardプランとExplorerプランの2階建てで、Explorerなら多くのアドベンチャーアクティビティが対象になります。ピッケル・アイゼン使用のクライミングも一部カバー対象。
ただし、日本人視点では以下の注意点があります。
- 出国後に加入する場合、72時間の待機期間あり(その間の事故は対象外)
- 保険金請求に免責金額(自己負担)が設定されているケースが多い
- 日本語サポートなし、請求書類も英語
- キャッシュレス診療には未対応(立て替えが必要)
- 年齢上限あり(プランにより異なる)
「日本の保険ではカバーされない領域(ピッケル・アイゼン使用)」が必要な人にとっての切り札ですが、英語での請求対応に不安があるなら日本の単発保険+山岳特約を検討するのも手です。
トレッカーが見落としがちな「危険なスポーツ」除外規定
ここは記事のなかでも特に大事な部分。多くの海外旅行保険は、約款に「危険なスポーツ」の除外規定があります。これに該当すると、ケガをしても一切補償されません。
普通のトレッキングは「危険なスポーツ」に該当しない
結論から言うと、一般的なトレッキング・ハイキングは「危険なスポーツ」に該当しません。これは大手保険会社の約款で共通して確認できます。
| 行為 | 保険対象 |
|---|---|
| ハイキング・トレッキング | ○ 対象 |
| 一般ルートでの登山 | ○ 対象 |
| ピッケル・アイゼン・ザイル等を使う登山 | × 対象外 |
| ロッククライミング・フリークライミング | × 対象外 |
| 沢登り(登攀道具使用) | × 対象外 |
| 山岳スキー | × 対象外 |
キリマンジャロ・EBCトレックは普通の保険でOK
キリマンジャロのマチャメ・マラング・ロンガイ等の一般ルートは、ピッケル・アイゼン不要。エベレストBCトレック(カラパタール5,545m含む)も同様。これらは普通の海外旅行保険でカバーされます。
高山病の取り扱いに注意
普通の海外旅行保険では「疾病治療費用」として高山病もカバー対象です。ただし、「山岳登攀(ピッケル・アイゼン使用)中の高山病」は明確に対象外と約款に明記されています。
一般ルートのトレッキング中の高山病は問題なくカバーされます。
キリマンジャロ・EBC・ABCの一般ルートの高山病なら問題なし。技術的な6,000m級を狙うなら、約款を必ず確認してください。
まとめ
最後にこの記事のまとめです。
- 普通のトレッキング・ハイキングは「危険なスポーツ」に該当せず、海外旅行保険でカバーされる
- ピッケル・アイゼンを使う登山は対象外。World Nomadsか山岳特約付き保険が必要
- 2026年現在、年会費無料の自動付帯カードはほぼ絶滅。利用付帯時代を前提に運用すべし
- エポスゴールドは救援者費用500万円・治療費300万円で、軽〜中級トレッキングなら単独でも実用範囲
- クレカ複数枚持ちで治療・救援費用は合算可能だが「上限が増えるだけ、実損払い」が原則
- 本格高所トレッキングは「治療・救援費用無制限」プラン(t@bihoプライム等)を上乗せが最適解
- やまきふ共済会は海外対応するが、高山病・道迷い・天災は対象外。万能ではない
2023年8月のキリマンジャロはエポスゴールド単独で行きました。当時は救援者費用が500万円もあるとは正確に把握していませんでしたが、結果的にマラングルートで起こりうるリスクの大半はカバーできていた水準だったと、いま振り返って思います。


